新組織(1995年5月22日施行)
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第2節 社長交代と新たな分野の開発
組織の再構築と相次ぐ経営改革
バブル崩壊によって自動車メーカーの新車開発が鈍って発注数が激減し、これが原因で鋳造用金型の価格が下落。93年度には91年度の61%にまで売り上げが落ち込んだ当社は、創業以来48年間の累積利益をも一掃した。このため、94年度は、アルミ鋳造用模型、プラスチック金型の需要大手やエクステリア製品の中堅企業にも営業を拡大して受注確保に努めたが、91年度の売り上げには遠く及ばなかった。
当時当社の鋳造金型模型部門は、設計スタッフが不足していた。工作設備の大型化も未整備で、精機部門は後半工程の放電加工の自動化が進まず、労働集約的な作業環境から脱却できずに従業員のモラール(志気)も低下していた。このため、大型工作機械の導入と放電加工の自動化が急がれた。
こうした状況に、1993年(平成5)1月に社長に就任した浩史社長は、組織の再構築と経営計画を打ち出し、中長期的な視点で従業員の意識改革と経営改革に乗り出した。
1993年(平成5)1月、ビジネスコンサルタントを導入して95年を最終年度とする中期経営計画「MA2Pプロジェクト(中期経営計画プロジェクト)」を策定した。「基盤の整備=課長クラスの主導」をテーマに下表のような12の重点課題を設定して取り組んだ。特徴的なのが、解析業務・試作業務の開始と新素材の開発で、試作業務については社長自身が新設した「試作設備導入プロジェクト」の責任者となって課題に取り組み、開発型起業への脱皮を明確にした。
MA2Pプロジェクト試作チームによる行動指針発表
94年1月5日には93年度の経過を点検・洗い出し、それらの問題をふまえたうえで「社員全員で協力推進する」重点課題を、能力開発、改善報告、マニュアル化、担当者制推進の四つのプロジェクトに絞り込んで、主査、リーダー各1人と数人のメンバーで構成する社長直轄のプロジェクトチームを結成。それぞれのプロジェクトにおいて全社員が達成すべき最終目標、例えば「実際に行っている仕事の内容レベルが適切に評価されている」「みんなが自分の仕事に誇りを感じ、日々新しい気持ちで真剣に努力している」「お互いに技術を高め、生産性が上がっている」などを明示して「見える化」し、「よそのまねでなく我々だけのやり方で、費用をかけず、みんなで一緒になって助け合いながら」推進していこうと呼びかけた。
1993年度重点課題
1 風土改革、教育制度
2 福利厚生、人事制度
3 新工場建設/span>
4 改善提案制度
5 予算制度導入
6 標準化
7 工程計画の充実
8 設計技術力の強化
9 営業技術力の強化
10 解析業務の開始
11 試作業務の開始
12 新素材開発
1994年度納入実績 (単位:百万円)
割合(%) | 金 額 | ||
金 型 | 砂型鋳造用外型 | 13.1 | 21.1 |
砂型鋳造用中子型 | 23.0 | 23.6 | |
プラスチック金型 | 5.4 | 10.3 | |
重力鋳造金型 | 4.4 | 8.2 | |
低圧鋳造金型 | 0.1 | 0.6 | |
ダイカスト金型 | 12.5 | 12.2 | |
樹 脂 型 | 砂型鋳造用外型 | 11.5 | 5.6 |
木 型 | 砂型鋳造用外型・中子型 | 9.3 | 9.9 |
合成樹脂 | 砂型鋳造用外型・中子型 | 1.8 | 0.6 |
そ の 他 | 部品製作他 | 18.9 | 7.9 |
また、「1条 社内にある無駄をなくそう。それは有効な仕事を行っていない人はいないかや、自分や周りのすべての人が付加価値をうまない労働時間の無駄をしていないかを考え、思い切って改革してみることである」。「2条 お客さんに売れる製品を造っているかを考えよう。競争相手よりも高い製品を造っていないか?競争相手はどれだけで造るのかを知り、同時に品質が良いのはあたりまえ。重要なのは他社よりも1円でも安く造れなければ技術ではないという事を肝に銘じよう」など従業員の意識改革を促した。
最終年度の1995年(平成7)には、精機部門の後半工程の放電加工の自動化が進まず、労働集約的な作業環境のイメージが強いことから、大型工作機械の導入、放電加工の自動化を目的に「95年事業拡張計画」を策定。「精機部門の効率化と大型化への準備」、「素材部門の改革」を柱に、事業のリストラ(再構築)に着手した。
精機部門の効率化と大型化では、10月に新本社工場(現、第三工場)を建設して従来の本社工場を精機工場とするとともに、エンジンブロック用シェルモード金型製作用に大型門型5面マシニングセンターを導入して金型設備の増強を図った。低圧鋳造プロセスの実用化、非鉄金属鋳造製品の低価格製品の製造に取り組んだ。
新本社工場(現、第三工場)竣工式
また、確実な実効をねらって外部ビジネスコンサルタントを導入。社長をはじめ管理職17人へのインタビューを実施して社内の実態を調査、生産設備のレイアウトから生産計画、工程管理、品質、原価把握、安全管理、従業員のモラールに至るまでの実態を把握し、5月にはその調査結果を基に組織を改正。生産管理部門を設置して生産管理システムを導入、NGの低減と3ム(ムリ、ムラ、ムダ)を排除すべく、各部門間のコミュニケーション向上と無駄な動きのない効率的設備配置を実現する新規事業に対処すべき人材の異動を行った。
新組織(1995年5月22日施行)
当社の業績推移(単位:千円)
1994年 | 1995年 | 1996年 | 1997年 | |
総売上高 | 519,850 | 637,790 | 639,530 | 783,650 |
対前年比 | 118% | 123% | 100% | 123% |
これは、営業部門で製造原価見積書(社内用)と工程計画表(素案)を作成して見積データと製造原価を管理するとともに、このデータを利用して生産管理部門では的確かつ短時間で生産計画を立案し、以降の負荷状況の把握、外注品・購入品・支給品の納期を含めた管理、作業業務の把握を可能にし、設計・製造・検査部門では生産管理部門で立案した生産計画によって日々の作業を見える化しようというものである。
こうした改革が功を奏し受注は94年以降順調に回復し、97年には売上高がバブル崩壊前の7億2000万円を超え、過去最高となった。これは、一つは、杉山工業などの受注が順調に回復したこと、同年小松製作所から分社したコマツキャステックス株式会社の氷見鋳鉄事業部、小山事業部(栃木県)から日産自動車や韓国大宇自動車向けエンジンを受注したことなどによる。
この年、京都で気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、京都会議)が開催され、この会議の最終日にトヨタ自動車が世界初のハイブリッドカー“プリウス”を発表。自動車産業は新たな転換期を迎えた。プリウスの開発では、製品開発に生産や調達部門などの各部門、部品メーカーが参画し、目標と情報を共有して共同作業を効果的に進めるコンカレント・エンジニアリング(ConcurrentEngineering)や、コンピュータシミュレーション(CAE:ComputerAided Engineering)などのデジタル・エンジニアリングが導入され、開発期間の短縮や品質の向上を実現し、当社もプリウスのサージタンクなどの鋳造金型で貢献した。