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60年の歴史 第2章

第2節 木型から金型への転換

積極的な設備投資と工場の拡充

当社の本格的な金型製造は1968年(昭和43)ごろ、「バルブボデーのシェル中子型」の製造で始まった。木型に加え金型も製造するようになった当社は、試作の段階から金型までの工程が一貫して社内で内製化できるため、データの保持管理、機密性、納期短縮などの点で同業他社より優位に立った。当社にとっても試作用木型から量産用金型まで広い範囲で顧客企業と関わるようになるわけで、金型への転換によって当社の仕事は、内容、質、量ともに大きく変わった。

法人化して金型に参入するまでは700万円程度だった年間売上高は、第1期(1966年1月1日〜12月31日)に約1147万円となり、第2期(1967年1月1日〜12月31日)には約2193万円、第5期(1970年1月1日〜12月31日)には約4400万円と、5年間で約6倍に伸びた。この数字からも小松製作所の発注の勢いが推し量られる。

NC倣いフライス盤

さらに小松製作所では、都市部で高騰する人件費抑制と経営効率化のため、粟津工場と大阪工場を統合して氷見に東洋一の鋳鋼工場(氷見第二工場)を建設する計画がもちあがっていた。実現すると、大型の金型も必要になる。氷見工場の担当者からは当社に「50人分の仕事は出すから、大型の金型も製造できる設備を入れないか」と要請されていた。仕事の内容に応じて機械設備を整えてきた幸作社長は、「小松製作所が入れるなら、うちにも入れんならんだろう」と、70年には県内初となる放電加工機、71年には米田鉄工所製の倣いフライス盤YD800を導入した。

放電加工機が広く工業界から注目されるようになったのは60年ごろで、本格的に自動車工業の鍛造金型加工などに使用されるようになったのは、半導体電源による低消耗放電加工機が出現した65年以降である。電極の力で金属の堅さに影響されずどのような形状にでも加工できるが、投資額も大きく、当社の導入は県内金型業界では初めてだった。また、日本初のNC工作機械、NCフライス盤が開発されたのは56年。最初の電子式倣いフライス盤は71年に入ってようやく発売され始めたもので、当社の倣いフライス盤YD800導入は日本海側では2番目という先進設備だった。1400万円という価格も業界で話題となったが、総売上高が4000〜5000万円の当社にとっても大きな賭けだった。

倣いフライス盤YD800を設置した新工場の配置

幸作社長は、積極的な最新設備整備によって、大量受注も可能な生産体制を構築して小松製作所の期待に応えようとしたのであるが、一方で、氷見第二工場の建設に伴って大阪からも金型メーカーが進出、立地する予定があり、これらの企業と技術面、設備面で対峙していかなければならないという意気込み、意図もあった。この倣いフライス盤の導入によって当社は木型職人の匠の技を最大限に生かして試作木型を造り、これを倣いフライス加工して精密な金型を製造できるようになり、より品質の高い金型製造が可能になった。また、小型から大型にまで対応できる技術力もついた。

当時、建設用機械の国内需要の中心は、ブルドーザーから油圧ショベルへと徐々にシフトしつつあり、小松製作所も68年から油圧ショベルの生産を開始するなど、技術革新の進展で新型車の開発も多かった。さらに、72年7月には、新幹線や高速自動車道のネットワークを建設し、工場を地方に再配置するとする通商産業大臣・田中角栄の『日本列島改造論』が出版された。出版と同時に著者が首相になると大型公共投資への期待がふくらみ、小松製作所も量産に次ぐ量産に追われた。73年4月、同社の鋳鋼工場氷見第二工場が竣工すると、当社は大型のブルドーザー用のエンジンまわりやカバー、ケースの金型を製造し、この期(第8期1973年1月1日〜12月31日)の総売上高も約7403万円と躍進した。

業容の拡大と相次ぐ設備投資に69年1月、隣接地を購入して工場を軽量鉄骨造鉄板葺きおよび木造瓦葺き2階建て(1階323.47m2、2階274.94m2)に増築したが、倣いフライス盤YD800や放電加工機をはじめとする設備機器を導入するために、70年5月29日に木材倉庫用の土地175.20m2を隣接地に求めるとともに、金型工場の建設に着手。そのための資本として9月12日資本金を700万円に増資した。新築した金型工場は10月30日に竣工。鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺き平屋建て、床面積50.05m2の広さだった。ここに県内初となる放電加工機と倣いフライス盤YD800を設置し、金型工場を整備した。

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